2013年5月30日木曜日

「2020年オリンピック種目最終候補」は今後どうなるのか?

 2020年オリンピック種目最終候補が決まった。結果的に、レスリング、スカッシュ、野球とソフトボール(以下:ソフト)が9月の総会に向けての最終候補競技となった。IOC副会長であり、次期IOC会長の最有力候補のトーマス・バッハ氏(ドイツ)が記者会見後、「チームスポーツ(野球とソフト)、個人スポーツ(スカッシュ)、格闘技(レスリング)というバランスが取れた3競技を選ぶことができてよかった」と述べたように、IOC理事間でも今回は納得のいく決断だったようだ。
 


                                                    (source from朝日新聞)

  今回は、過半数(総数14)の票を得る競技が出るまで、最下位を除外して投票を繰り返すという投票方法で行われており、レスリングは、第1回目の投票で過半数の8票を獲得し、早々に9月のIOC総会の「最終種目候補」となった。他の競技であるスカッシュ、野球とソフト、空手は接戦だったようだ。この結果からもわかるように、IOC理事会は、2月に2020年オリンピック競技からレスリングを除外候補に決めたにも関わらず、5月には「最終種目候補」に戻すという決断をした。

 はたして、これらの一連の動きがどういう意味を示しているのか?

 スカッシュは、オリンピックスポーツに採用される為、ロビー活動に年間$2.4 million (約2億5千万円)の予算を計上するなど、ロビー活動に積極的に投資してきたと言われている。さらに、空手は、今回で3回目の挑戦であった。そもそも、IOC理事会の当初の目的は、競技の入れ替えであったが、結局レスリングを戻すというのではあれば、何の為に理事会を行い、レスリングを外したか疑問が残る。長年、オリンピック競技になる為にロビー活動をしてきた他の国際競技連盟の立場はどうなるのか。

 また、あくまでも個人的な見解だがレスリングという伝統競技の除外に対する反応は、絶対的な権力を持つIOCにとって想定外だったと思う。従って、最終判断をIOC理事会で決めるのは難しく、約100人のIOC委員が投票する総会に決定を委ねるしかなかった。多くのIOC委員がレスリング復活を望んでいることは周知の事実であり、9月の総会でレスリングがオリンピック競技として戻ってくる確率は非常に高いと言えるだろう。

 従って、今回、「最終候補種目」を3種目にしたのは、長年ロビー活動をしてきた国際競技連盟の反発を少しでも抑える為であり、結局は、9月のIOC総会でレスリングがオリンピック競技として戻ってくる一つの筋書きでしかないのではないか。

2013年5月25日土曜日

「2020年オリンピック種目最終候補」に残る競技とは?



いよいよ、東京が目指す2020年オリンピック招致も佳境を迎えている。今後のスケジュールは以下の通りで開催され、以下の4ヶ所で東京は重要なプレゼンテーションの機会を得る。

5月:スポーツアコード@サンクトペテルブルク
6月:ANOC(各国オリンピック委員会連合総会)@ローザンヌ
7月:IOC委員への開催都市計画説明会@ローザンヌ
9月:IOC総会@ブエノスアイレス


「2020年オリンピック開催都市」決定も重要であるが、レスリングが2月に「2020年オリンピック種目除外候補」になってから、「残り1競技、どの競技が2020年オリンピック種目に入ってくるのか」にも大きな注目が集まっている。

来週のスポーツアコードで「2020年オリンピック種目最終候補」がIOC理事会で決まる。

ここでポイントになってくるのは、ここでもまた15人のIOC理事の間で絞りこまれるという事である。

残り1枠である「2020年オリンピック種目」が決まるプロセスは、来週のスポーツアコード会議で行われるIOC理事会で、15人のIOC理事によって8種目の候補(レスリング、スカッシュ、空手、野球とソフトボール(以下:ソフト)、ウーシュー、スポーツクライミング、ウエイクボード、ローラースポーツ)から恐らく3種目に絞られ、その後、9月のIOC総会で約100人のIOC委員の投票により「2020年オリンピック種目」の残り1種目が決まる流れとなっている。

では、現在、どこの競技がリードしているのか?

ローザンヌのスポーツ関係者からの情報を元に分析した結果、
あくまでも個人的な見解になるが今回は、レスリング、スカッシュ、空手の3競技が最終候補として選ばれるのではないかと予想している。そして、現在、微妙な立ち位置にあるのが野球とソフトである。

そこで、採用される可能性が高い各スポーツ競技の評価を以下のようにまとめてみた。

1.レスリング
9月のIOC総会で「2020年オリンピック種目」として戻ってくる最有力候補と言われている。大事なポイントは、野球とソフトは2005年IOC総会@シンガポールで約100名に及ぶIOC委員によって除外となったが、レスリングは15名のIOC理事によって除外候補とされた点である。以上の事から多くのIOC委員がレスリングの復活を望んでいる。また、IOCが国際レスリング連盟に対して散々忠告してきた、視聴者にとってわかりにくいルールの改善、女性競技の数を増やす事、女性役員登用の組織改革等の努力を、現在、必死で行っていることからIOC理事の考えも変わってきたのではないかと予想される。

2.スカッシュ
イギリス発祥のスポーツであり、ヨーロッパでも人気の高いスポーツである。国際スカッシュ連盟は、142ヶ国に連盟を構えており、オリンピックスポーツに採用される為のロビー活動に年間$2.4 million (約2億5千万円)の予算を計上するなど、他の競技に比べロビー活動に投資してきたと言われている。一方で、一つの問題点は、ヨーロッパでは人気の高いスポーツであるが、世界的に人気が高いかと問われると疑問な点である。

3. 空手
空手は今回で3度目の挑戦となる。長年、続けてロビー活動をしている事からレスリングとは違い観客に見やすいゲームルールの改善、テレビ技術問題の改善等、IOCの要求に積極的に答えてきた経緯がある。そして、ここでのポイントは、世界空手連盟の本部は、スペイン・マドリードにあり、スペイン出身のアントニオ・エスピノス現会長とも仲良しであるIOC理事のサマランチJr氏がサポートしており、度々オフィスに訪れていると聞いている。問題点として、IOC内では格闘競技種目は多いという認識があるが、IOC理事内でのサマランチJr氏の影響力を考えれば3種目の最終候補リストには入ってくるのではないかと予想する。

4.野球とソフト
当初は、商業的にも他のスポーツ種目より利益が見込める為有力候補ではあったが、MLBのコミッショナーがメジャーリーグ選手のオリンピック参加に否定的な見解を公の場で言ってしまった為、状況は一変した。IOCは、各競技団体にトップアスリートの参加を求める為、IOC委員は、今回のMLBの公表に良い気をしていないのが現実だと考える。国際野球連盟のオリンピック担当者もIOC委員の野球とソフトに対する反応は良くないと捉えており、非常に難しい状況ではないだろうか。

その他の4競技に関しては、ロビー活動不足と言われており、よほどの事がない限り「2020年オリンピック種目最終候補」に残るのは難しいと言われている。

現在、レスリングが有力候補と言われている中、スカッシュ、空手、野球とソフトが最後はどうなるか、最終的に、IOC理事はどう8種目から3種目に絞り込むのか。是非、来週のIOC理事の決定に注目したい。

「2020年オリンピック種目最終候補」は、5月29日(水)(日本時間30日午前未明)スポーツアコード会議@IOC理事会で決定される予定となっている。

2013年5月24日金曜日

AISTSが世界第3位に!!


IOC(国際オリンピック委員会)が中心となり設立したAISTS MSA (International Academy of Sports Science and Technology)は、IMDビジネススクール、スイス連邦工科大学ローザンヌ校、ジュネーブ大学、ローザンヌ大学と共に共同設立された学校でもある。

2000年に設立されたこのプログラムは、スイスのローザンヌにあるという学校のスポーツ経営学の修士プログラムであり、カリキュラム自体は経営学と経済、テクノロジー、法律、社会学と医学の5つに分かれており、スポーツの現場における様々な分野が幅広く学べるのが特徴である。

2012年12月、AISTS MSA 10周年記念&卒業式が行われ、現在まで総勢300名以上の卒業生を輩出しており、IOC及びIFsに行けば必ずAISTSの卒業生が最低1人は在籍しているという「ローザンヌネットワーク」の中心となっている。

その母校であるAISTSが、今回、The Eduniversal Best Masters Ranking で主に以下の3つのポイントからの総合評価で、世界第3位のスポーツマネジメント大学院に選ばれた。

1. Reputation of the Programme(プログラムの評価)
2. Salary of the 1st employment (大学院卒業後の最初の就職先での給料額)
3. Satisfaction of the students (生徒のプログラムに対する評価)

AISTSのボーナスポイントとして、
・25ヶ国という多国籍の生徒が集まっている点
・10%の卒業生が質問に回答している点
・卒業後のスポーツ界でのインターシップもしくはフルタイムジョブを高い確率で得ている点
・生徒の授業への出席率が良い点 等々

今回のThe Eduniversal Best Masters Rankingは、大学院の機関を評価しているのではなく、プログラムの内容に関しての評価になっている。

ちなみに、その他のスポーツマネジメント大学院はどうなっているのか?

こちらを参照してほしい⇒The Best Masters Ranking in 50

残念なことに、お隣の韓国は3校もトップ50に入っているのに、日本のスポーツマネジメント大学院は1校も入っていない。

近年、日本人学生の能力低下が問題になっているが、何が問題なのか?

教育システムの問題、学校の先生の問題、親の問題、英語力の問題・・・・・

大事なポイントは、物事の根底から分析し、「本質的な問題」を見つけることにあると思う。

例えば、日本人の英語力が低いから、世界と戦える人材を育てるために、大学試験でTOEFLを導入するという話もでているが、果たしてそれで「日本人の英語力向上」に繋がるのか?

導入を決めた方々は、TOEFLを受けたことがあるのか?
どれだけ難しいテストかご存知なのか?

今の学校の英語教育システムでは、到底、TOEFLのテストに適したレベルになっているとは思わないのに、TOEFLをクリアしないといけない。 

矛盾していないか?

まずは、先に、学校の英語教育システムをTOEFLに適したシステムに変えるのが先ではないかと思う。そうしないと、ほとんどの学生がTOEFLテストを勉強するだけで受験勉強を終えてしまう気がして仕方がない。

TOEFLで100点を超えるためにはどれだけの努力が必要なのか・・・・
身を持って感じた人間として容易にTOEFLを導入したら「英語力は改善されるだろう」という考えには賛同できない。

この結果からわかるように日本の教育レベルは徐々に世界から離されてきていると思う。

いよいよ、日本の「教育」について、世界と戦う人材を育てるために、本格的に「教育論」について議論する時が来たのではないかと思う。

2013年5月17日金曜日

中東情勢は五輪招致に影響を与えるのか?

2013年9月7日@ブエノス・アイレスで2020年オリンピック開催国が決定する。
いよいよ残り約100日となってきた。

世耕弘成官房副長官は会議後の記者会見で「これまでかなり外国に働き掛けてきたが、今後は支持を確実なものにしていく段階になる」と強調した。(共同) 2013.5.16

以上の言及のように、残り約100日という期間、ここからが本当の勝負となってくる。
5月の「スポーツアコード」、6月のANOC総会@ローザンヌ、7月のIOC委員に対するプレゼンテーション@ローザンヌで7月下旬当たりには大方の流れができあがるのではないかと予想する。

ポイントは、一点のみで、「どのようにしてIOC委員から2020年東京開催の賛同を得られるか」である。約100名のIOC委員に対して、誰が東京に投票をするかしないかという具体的な所までわかっていないといけない、そして、もっと言えば、第1回目の投票で最初に負けた国の投票をどのように得るかという第2回目の投票の動向まで想定していく段階になるだろう。

そして、同時に、この時期に大事になってくるのは、「国際情勢(政治)の動向」である。

オリンピックの招致活動において、「大きな力」=「国際政治(国際情勢の影響から)」が働くのは関係者の間では周知の事実であり、その「大きな力」を引き寄せることが何よりも大事になってくる。

では、過去のオリンピック招致レースはどうだったのか?
国際情勢と五輪招致の関係性を見ていきたい。

①2008年北京五輪
・中国(北京)は、なかなかオリンピック招致の正式表明を発表しなかった。その理由として、中国を  
  国際社会に引き入れる為、2008年は中国(北京)での開催を強く望んだアメリカとの駆け引きがあ
 った為である。アメリカ企業であるGEは、中国のインフラ事業をオリンピックネットワークで獲得
 しようとし、オリンピックスポンサーでもあるコカコーラ社も、当時、競合他社でもあったペプシコ社
 の台頭から、巨大マーケットの中国市場への参入の強化の為望んだ経緯もあり、アメリカの経済
 界が北京開催を強く望んだ。また、もともとニューヨークは、2008年の大会招致に立候補してい
 たが、2週間もたたずに立候補を取り下げるというアメリカ政府からの圧力があったと思わさせる
 出来事もある。結果、中国(北京)は、最終的に56票という過半数で圧倒的な勝利を収めた。

②2012年ロンドン五輪
・もともと2012年オリンピック招致は、2008年の北京代替案でIOCに借りを作ったパリが優勢であ
 った。しかし、結果は、パリとの4票差という激戦を制したロンドンに決まった。その背景として、ア
 メリカ主導のイラク戦争に反対したフランスには絶対に勝たせてはいけないと、アメリカのIOC委
 員が他国のIOC委員を巻き込みロンドン票を固め、最終的に、イラク戦争に協力したイギリスに
 勝たせたと言われている。

③2016年リオジャネイロ五輪
・前評判は、1996年アトランタ五輪以来の大本命と言われ、最終プレゼンには、オバマ大統領夫
  妻 も出席したシカゴが最有力だと言われてたが、結果は、第1回の投票でまさかの落選となっ
  た。背景に何が起こったのか?今回は、2012年のアメリカの動きに対するIOCの仕返しであった
  と言われている。長年、多額の放映権、スポンサー料を払っているアメリカ側に容易に勝たせる
  事をしない程、国際情勢と五輪招致の関係性は複雑なのである。

では、2020年招致活動と国際情勢の関係性はどうなのか?

マドリードのEU経済不安はもちろんであるが、一つの大きなポイントとなってくるのが中東情勢である。



具体的に、現在、中東情勢は何がどうなっているのかご存知だろうか?

先日、トルコ南部でテロ爆弾があり多数の死者を出した中東情勢は今後ますます悪化していくと予想される。その結果、とうとう、アメリカも不本意ながらシリア情勢に介入を深めていくようだ。基本的に戦争が嫌いなオバマ大統領はできる限り介入を避けたかったが(イラクやリビアとは違い、シリアには石油がない為、アメリカにとってはメリットがない)、

1.これ以上時間を費やしたら介入がより難しくなり、また、介入コストもよりかかる為、早期介入を
  望む人が多い事

2. 放置すればする程、周辺国に難民が流れ込み宗教対立の激化を生む事

3.シリア(イラン・ロシア)VSイスラエル(アメリカ・NATO)の構図から、ロシアがアメリカに協力する
  という動きに変わったてきた事(先日、プーチン大統領とイスラエル首相との会談もあり)

以上の事から、アメリカも本格的にシリア情勢に介入をしていくが、それに伴い、中東情勢の不安定化が長期化すると予想される。上記の五輪招致の過去の例からわかるように、各国の思惑が働くのが五輪招致であり、最終的な「大きな流れ」を作る決め手となる。

今後、中東情勢は2020年五輪招致に間違いなく影響を与えていくと思う。中東情勢がどう2020年五輪招致に影響するかが大きなポイントとなり、今後、中東情勢の動向には目が離せない。

2013年5月12日日曜日

なぜIOC委員は候補都市を訪問してはいけないのか?

 IOC(国際オリンピック委員会)は、2002年の冬季オリンピック・パラリンピック招致の際に起きた「ソルトレークシティー招致スキャンダル」と呼ばれる事件以来、IOC委員が自由に立候補都市を訪問する事を禁止してきた。

 理由として、当時、ソルトレークシティー招致委員会と一部のIOC委員との間で法外な金銭授受があった為である。

 事の発端は、ソルトレークシティー招致委員会の主要メンバーからの手紙が原因で、「もうこれ以上は奨学金を支払えない」という内容から、各メディアが「招致委員会がIOC委員の娘に総額40万ドルに及ぶ奨学金を提供した」と報じた事から問題が明るみにでる事になり、大問題へと繋がった。

 以後、問題を収束するべく、IOCは臨時総会でIOC委員の開催地に立候補した都市への訪問を「全面禁止」とする事を決めた。さらに、仕事の関係でどうしても行かなければ行けない場合は、IOCに届け出て許可を受けなければいけなく、その上、立候補した都市からIOC委員への個別接触もしてはいけない事になった。

 以上の決定をされるようになって、10年以上がたつがローザンヌでも各方面からこの問題について話をよく聞くように思う。

 3 Wire SportsのAlan Abrahamson氏も「次期IOC会長に求める10の提言」でオリンピック開催都市を決めるBid city processを変えなければいけないとして、そろそろIOC委員も各立候補都市を訪れても良いのではないかと提言している"The IOC presidency Top-10 list by Alan Abrahamson" (今後のIOCの動向を見極める上で、重要なキーワードがたくさんあるのでお時間ある時にでも、是非一読して欲しい。)

 
  では、なぜIOC委員は各都市を訪問するべきなのか?

 私は、彼らの指摘を含め、大きな問題は以下の3点にあると思う。

 まず、1点目は、自分の目で見ずに、いったい何を基準にして開催都市を選ぶべきなのか?が不明確な点である。少なくとも訪問を禁止されているIOC委員は、1次情報を得ることができず、誰かに聞くのか、ニュースを見るのかという2次情報に頼らなくてはいけない状況にある。

 そして、2点目は、IOC委員の訪問が禁止された事への変わりの制度として作られた「IOC評価委員会のレポート」であるが、問題は、多くのIOC委員が評価レポートに目を通していない可能性があると、Alan Abrahamson氏は述べている。 「評価委員会のレポート」を読まなければ何を基準に各立候補都市を評価するのかさらに疑問である。

 最後に、3点目として、立候補する都市、とりわけ初めて立候補する都市が不利な点にある。理由として、世界的に有名な都市、かつオリンピックなどの国際大会を何度も招致した経験を持つ都市がライバルとなれば当然不利に動く事は否めない。

 以上の3点の問題を解決するべく、今年の9月次期IOC会長が決まるタイミングで各オリンピック開催都市の決定方法も変わっていくのではないかと期待されている。今後の「IOCの動向」に是非注目したいと思う。


"AISTSの講義に来てくださったフィンランド出身のIOC委員であるPeter Tallberg氏もこの問題についてお話くださいました。

そして、やはりIOC委員は、世論に流されるのではなく、独自の考え方、プライドを持ち、責任を持って開催都市に投票されているのだなと話をする上で痛感しました。

もちろん、2020年東京に関しても、応援のお言葉を頂いております!!"




2013年5月3日金曜日

「今回の騒動」について



日本のゴールデンウィークにあたる時期に、「猪瀬知事失言問題」が世界中のメディアで大きく取り上げられた。こちらスイス、ローザンヌでも当然話題にあがった。
 
事の発端は(日本でも十分に取り上げられているので詳細は割愛させて頂く)、猪瀬知事がニューヨーク訪問中、ニューヨークタイムズのインタビュー中に競合都市を批判する発言をした事からだ。IOC(国際オリンピック委員会)は、立候補都市の招致活動関係者が競合都市を批判するような言動を(オリンピック憲章:五輪招致都市活動規則14条)にて固く禁じている。

それに対して、ローザンヌのスポーツ関係者からは、東京はBig Chanceだったが、これで分からなくなった。」「欧州の文化、オリンピズムの観点から、自分の事はどれだけアピールをしても構わないが、他者を批判する事は一番良くないことだ」「何が一番よくなかったかというと、宗教という非常に慎重にならなければいけない話題について言及したことだ」以上の厳しい言葉を頂いた。特に宗教の言及については、日本人の感覚からは想像を超える程海外ではタブーな話題とされている。私も同様で、クラスメイトが25カ国から集結しており、様々な宗教が存在する中、宗教の話題には極力ふれないようにしている。

さて、「今後の招致活動の動向」を読み解く上で、重要なのは何が一番のポイントであるかという事を理解する必要がある。ここでの一番のポイントは、「なぜIOCが今回の騒動について処分なしの判断をしたのか?」という点だ。この背景を読めるかどうかで今後の招致活動の仕方は大きく変わってくるのではないかと個人的には感じている。

201397日(土)ブエノスアイレスで、最終的に総数約100票のIOC委員による投票で2020年五輪開催地は決定される。そうした中、IOC委員に大きく影響を与えるのがIOC事務局側なのである。7月のIOC評価委員会(IOC事務局側)のレポートも最終的には彼らが作るので「彼らの意図」があるレポートにできあがるし、そもそもIOC委員は立候補都市を訪問する事を禁じられている。つまり、彼らは自分達の目で状況を把握することはできないし、結局は、2次情報という形でIOC事務局側から情報を得るのが自然な方法となってしまうのである。

では、仮に、今回の一件について、IOC事務局側が「東京に何かしらの処分を課した」のであれば、当然、東京には大きな減点となり勝負が決まったところではあった。つまり、何が言いたいかというと、五輪初開催というメッセージが好きなIOC事務局側的には、勝負を決めようと思えば決める事ができたはずである。どういう思惑が裏で働いたかは分からないが、東京にとっては騒動が形に残らない点では、「最悪の事態」だけは避けられたとというところだ。

では、今後、「五輪招致活動」をどのように進めていくべきなのか?改めてしっかりした行動方針を打ち出す必要があるのではないかと思う。主観的な話になるが、私個人としては以下の3点が重要になってくると考える。

まず、1点目は、「イスラム諸国への謝罪」を世界のメディアが集まる場できちんと行う事である。当然ながら、今回の騒動でIOC委員に対しての「マイナスイメージ」は拭えない。しかし、この騒動が仮に8月に起きてしまったのであれば、もう取り返しがつかない事態になっていたが、幸い、招致都市決定までまだ4ヶ月ある。ましてや、5月の「スポーツアコード」、7月の開催地プレゼンテーションとIOC委員と本格的に接する機会はまさしくこれからで、これからの4ヶ月が「招致活動の佳境」を迎えるのである。この7月までに流れが決まるといっても過言ではないと考える。これからこの事態を真摯に受け止め、しっかりした対応をすることが「今後の東京」の印象を作っていくのではないかと考える。

そして、2点目は、1点目に伴い、「東京招致PR戦略の方向転換」である。今回の騒動を受けて、元々予定していたプレゼンテーションだけを行うのは不十分だと思う。何もなかったかのようにするのではなく、少なからず今回の騒動を受け、「どのように東京は変わったのか」をPRする必要があると思う。起こった事は仕方がないことだが、それに対して「どういう対応を東京はしていくのか」という動向を見ていきたいとローザンヌのスポーツ関係者も動向を注目をしている。

最後に、3点目は、一番重要になってくる正確な「票読み」である。今回の騒動を受け、今一度、現在の選挙勢力図を分析するべきだと思う。東京は、現段階で何票の票を確定でき、何票の票を高い確率で得る事ができるのか、今回の一件で、何票の票が無くなりそうなのか、そして、何票の票が確実に無理なのか。以上の事から、不確定な票に対してどれだけのフォローができるかで勝負の行方変わってくるのではないかと感じる。
 
現在、東京招致活動は、大変な時期を迎えている。しかし、「大変」とは、その漢字の通り、「大きく変わるチャンス」でもある。個人的にも、「一番ピンチな時こそ、自分の株を上げるチャンスであった」と思う事が今振り返ってみれば多々ある。「東京招致チーム」も今が力の見せどころではないか。残り4ヶ月、私も全力で応援したいと思う。