2013年3月30日土曜日

前半戦を振り返って!!

ローザンヌに来て早3ヶ月が過ぎようとしている。

 IOC(国際オリンピック委員会)が中心となって設立したAISTSの授業も半分が終了した。
サッカーで例えると前半戦が終了した感じだ。

現在は、イースターブレイク中であり、大学院も1週間の休みが与えられる為、クラスメイトは家族と過ごす為に自国へ帰っている。

イースターとは、「復活の主日」と言われることもあり、キリスト教の典礼歴における最も重要な祝いの日である。事の経緯は、十字架にかけられて死んだイエス・キリストが三日目に復活したことを記念することから始まった。

私はというと、4月から始まる後半戦に向けて、自分が足りなかった点を強化する為、そして、後半戦に向けてよい準備をする為、ローザンヌで日々能力アップに励もうと思う。 

従って、前半戦の感想を簡単に振り返っておきたい。

前半戦を終えて強く思うのは、「グローバルリーダー」になる為には相当な努力が必要だという事。

そもそも日本で最近よく耳にする「グローバルリーダー」の定義とは何なのか?

この話に及ぶと、昨年、サッカー協会の先輩と日本で飲んでいる時、何気なく聞かれた質問をよく思い出す。

「国際化とグローバル化」の違いについてわかるか?

当時、私は、即答できなかった。

Wikipediaによると、「国際化とグローバル化」の違いについて以下のように説明されている。

「国際化が国家間に生まれる概念であり、その基本的単位はあくまでも主権国家であるのに対し、グローバリゼーションは「世界」を一体的なシステムと考え、主権国家を必ずしも前提としていない点が異なる[3]。つまり、国際化社会においては国境の役割は依然大きく、たとえばヒトやモノが国境を通過することは監視すべきものとされるが、グローバリゼーションにおいてはそもそも文物の国境通過は必ずしも監督すべき事項ではなく、そこにおいて秘匿性を保持することが、前提となる価値観のひとつとして重要視されるのである。」

難しく書かれているが、簡単に言うと国際化とは「日本」を中心にして、そして、グローバル化とは「世界」を中心にして物事が考えられている事だと解釈している。

例えば、日系企業で海外に駐在している日本人リーダー、私は、その方を「グローバルリーダー」と呼べるかといったらはたしてどうか?と考えてしまう。

これは、私も同じで、クラスメイトとのプレゼンテーションで、「日本スポーツの歴史」については、リーダー的な役割でうまくグループの中心的な存在になれるが、それ以外のプレゼンに関して、リーダー的な存在になることができなかった。ネイティブ並みの英語力、その英語力で考えるスピード、そして、欧米の文化をわかっていないと話に入っていけない。

つまり、何が言いたいかというと、国際的なリーダー」にはなれるかもしれないが、「グローバルなリーダー」にはなる事は相当難しいという事少なからず、日本人という事がアドバンテージで働いている限り「リーダー」として考えられることは難しくないが、「日本人」がアドバンテージに働かない、つまり、欧米人と同じポジションで「リーダー」として考えられるのは相当難しいし、そういう日本人こそ「真のグローバルリーダー」だと思う。

IOC及びIFsに日本人職員がほとんどいない事実がこの点の難しさにあると思うし、反対に、日本人職員がほとんどいない点が、「日本の国際スポーツ界での地位の低さ」を表しているのではないかと最近よく考える。

後半戦は、「真のグローバルリーダー」を意識して、授業に貢献していきたい。

2013年3月17日日曜日

「オリンピックの世界最大イベント化」に貢献した男













 
 AISTS Open Module」と言われる、スポーツ関係者達との合同セッションである講義を1週間受けてきた。

  今回のテーマは、「マーケティングとスポンサーシップ」である。主な内容として、「スポンサーシップの評価」、「顧客生涯価値の算出方法」、「マーケティングプラン」、「アンブッシュマーケティング」等々。このプログラムの特徴は、「世界のスポーツ産業」の第一線で働いている、もしくは、働いていた講師を招いている所にあると思う。
  
 1週間の講義でオリンピックに様々な形で携わる「マーケティング担当者の経験」について学んだ。その中でも、最も印象に残っているのは下記の3点のテーマである。

  1.オリンピックスポンサーである「OMEGA」の観点からの「スポンサーシップの評
   価」について

  2.FIVB(国際バレーボール連盟の「マーケティングプラン」について

  3.IOCのオリンピック開催に向けての優先事項、そして、2020年の開催立候補都市
   について」

  まず、1つ目は、「スポンサーシップの評価」、オリンピックスポンサーである「OMEGA」の担当者がどうオリンピックを評価しているか、そして、同様のプロゴルフツアーにもスポンサードをしているため、2016年のリオジャネイロから正式種目になる「ゴルフ競技」とどう差別化を図るかが話の中心になった。

  そして、2つ目は、週の始まりの月曜日に「将来的に、イベントオペレーションと商業化の観点から、FIVBはどのようなマーケティングプランを作るべきか?」についてグループプレゼンしなさいとうお題を頂き、8つのチームに分かれプレゼンの準備をしてきた。そして、最終日の金曜日には、FIVBの職員(大学院の卒業生)が来てくださり、「マーケティングプラン」の講義と同時に私達のプレゼンテーションの対して具体的なフィードバックを頂いた。当日は、FIVB職員も常に新しいアイデアを考えている様子もあり、私達のプレゼンテーションも興味深く聞いて頂き、議論は具体的な話に及んだ。非常に相乗効果のある内容のプログラムになったと思う。

 


  

  

  







  そして、講義の最後には、国際オリンピック委員会(IOC)のマーケティング部長を約20年務め、テレビ放映権料やスポンサー料の収入の拡大を図ったマイケル・ペイン氏が登場。サマランチ元会長の右腕と言われた人物である。彼は、現在、「イスタンブール招致チーム」のコンサルタントとして活躍しており、しかも、聞いた話によると、2012年のロンドン、2016年のリオジャネイロの招致成功に大きく貢献したとされている。

同時に彼は、現在のIOCが今後のオリンピック開催に向けて最も力を注いでいる優先事項についても語ってくれた。彼によると、

1. 若い世代がスマートフォン・ゲームに依存している時代からどのようにスポーツに参加してくれる時代を作り上げるか

2. オリンピック開催のオペレーションコストをどのように抑えるか

3. オリンピック開催後の遺産をどのように効果的に継続させるか

 (White elephantをどのように無くすか)

4. 開催都市でのチケット問題をどのように解決するか

5.次期会長選挙=2020年開催都市決定にも少なからず影響すると言及した。

  そして、私の「2020年開催立候補都市をどのように評価するのか?」の質問に関して、彼は、各都市の弱点を中心に丁寧に説明してくれた。彼は、東京の一番の弱みは、オリンピック開催のメッセージが弱い事。日本の誰1人とも明確に答えられていないと説明。

  一方で、イスタンブールの弱みとして、2014年のソチ、2016年のリオジャネイロの準備遅れにIOCは頭を悩ませており、その可能性があるイスタンブールの追加はIOCにとって、さらに頭痛の種になり、これをどう解決するかに現在彼は尽力しているとの事。そして、マドリードは、財政問題である。

  今、現在、世界中が注目する話を各担当者から話を聞けたことは非常に有意義であった。これらの講義を通して、多くの情報をインプットできる環境にいるが、いつかは、これらの学びをアウトプットできる環境に身を投じ、「日本のスポーツ産業」に貢献したいと強く思った。

  次の月曜日には、「マーケティング」のテストもあり、もう1度、今週学んだ事を、週末を生かして復習したい。

 
 
 
マイケル・ペイン氏 執筆本
マイケル・ペイン氏よりサインを頂きました

2013年3月9日土曜日

猪谷さんの「IOC~オリンピックを動かす巨大組織」について

IOC名誉委員、猪谷さんの新刊「IOC~オリンピックを動かす巨大組織」を読ませて頂いた。
どうしても読んでみたかった新刊で、日本から発売と同時に急いで取り寄せた。

猪谷さんの存在は、恥ずかしながら、昨年、大学院に合格してから、
日本オリンピック委員会でお世話になるまで知らなかった。

現在、IOC名誉委員でもある猪谷さんは、1956年コルチナ・ダンペッツオ五輪で回転2位になり、日本人として初の冬季五輪メダリストとなったオリンピアンでもある。1982年、IOC委員に選ばれてからは、理事に2度選出、2005年には副会長も歴任されておられる。IOCに精通されており、もちろん、今回の2020年東京五輪招致にも深く携われておられるお方である。
 実は、猪谷さんとは一度、恩師である大先輩の計らいもあり、昨年の猪谷さん主催:ゴルフコンペでお会いさせて頂いたことがある。その時に抱いた印象は、「非常に気さくな方」、そして、とにかく「参加者の方への配慮」が凄かった事。100人以上の参加者がいる中、コンペの賞品を走り回って配られていたのが今でも大変印象に残っている。
 
余談ではあるが、私自身もゴルフコンペに参加させて頂き、まったくの偶然に81位という「猪谷さんの会長賞」(猪谷さん自身が81歳であることから)を本人から直接手渡しで頂いた事があり、少なからずご縁を感じた記憶がある。
 
さて、本題の内容であるが、今、まさしく講義を通して勉強している部分と本の内容がリンクしており非常に勉強になった。間違いなく今後の私のバイブルになると思う。
少しでも「オリンピック」に興味がある方は、是非、一度読んでみて欲しい。
 
その中で、特に印象に残った内容、そして、自分自身がローザンヌに住んでみて感じる事をリンクさせながら簡単に振り返っていきたい。
 
IOC委員になったのだから『オリンピック憲章』に精通しなさい
私自身も、最初の1ヶ月の講義は、「オリンピック憲章」について取り上げられることが多かった。
それを通して、女性差別問題、環境問題、ガバナンス、ドーピング、オリンピックレガシー、選手のセカンドキャリアについてIOCがどう向き合っているのか、将来的にどのような方向性を歩もうとしているのか、議論は白熱した。IOC及びIFsのMission, Vison and Objectiveについて何度も確認した。それについても、「オリンピック憲章」に各組織はどうあるべきかが記載されている。
 
夏と冬のオリンピックのアンバランスさ
夏のオリンピックが25中核競技を中心に実施している中、冬のオリンピックは7競技に留まっている。従って、当然、大会規模、そして、動くお金も夏と冬では大きな違いがある。私自身も、講義で冬のオリンピックケースを聞くことはあまりなく、夏のオリンピックが中心となっている。そうした観点から、猪谷さんの問題危機は納得させられるのである。
 
若者層の弱体化及び、スポーツへの関心が薄れている傾向について
この話題は、本当によく講義に出てくる。携帯電話・インターネット・パソコンでのゲームの普及に伴い、若者の肥満率の増加・運動する機会の減少は間違いなく事実である。この問題をどう改善するかでIOCは対策を練った。そして、立ち上げられたのが「YOG:ユースオリンピックゲームズ」である。2010年シンガポールで初めて開催されたこの大会は、14歳~18歳を参加対象とし、ジュニア世界選手権で一定の成績を収めた選手が参加するまさにユース世代のオリンピックである。しかし、この大会はそれだけでは終わらない。IOCは、文化・教育プログラム(CEP)を大会プログラムに取り込み、参加アスリートは若い世代から「オリンピック・ムーブメント」について勉強する機会を与えられる。それと同時に、各IFsについても新しいチャレンジをする場であり、バスケットボールの3on3がYOGで正式種目として採用されている。従って、参加する側も開催する側も新しい試みの中で学んでいこうという目的が強い大会でもある。
 
日本緊急課題:ローザンヌのIOC本部・IFsに若い人材を送り込み、人材育成と情報収集を行うべき
これは非常に納得させられる。なぜならば、ローザンヌに来て、IOC及びIFsで働いている日本人職員は私が知っている限り1人しかいない。それに関して、本当に「日本スポーツ界」は遅れをとっていると思う。それは、私自身も同じである。大学院の中で、他のクラスメイトは、インドネットワーク、中国ネットワーク等々の卒業生(IOC及びIFsで働いている)が自国の後輩たちと連携をはかっている姿を見るとうらやましく思う。また、世界第3位の経済力を持っているにも関わらず、ヨーロッパでの「日本スポーツ界」のプレゼンスは低いのではないかと思う。それに関して、やはり言葉の問題は無視できない。理由として、IOC及び各IFsでは、基本的にはフランス語が使われている。もちろん、職員は英語でも話せるが、コミュ二ケーションを含め、フランス語も仕事上厳しいのではないかと思う。その他にも、よくクラスメイトに驚かれるのは、「スポーツの基本法」が2011年に成立したのは遅すぎないか?、そして、なぜ「スポーツ庁」が存在しないのか?日本ほどの経済国がなぜ??とよく聞かれる。
 
恩師の大先輩がよく言っていた言葉を思い出す。
 
スポーツ発展国か後進国の違いは、「若者、そして、女性がスポーツ界で高いポジションに得られているかどうか?」、つまり、チャンスが与えられているかどうか?だと・・・
 
少なくともローザンヌでは、多くの大学院の卒業生が各IFsで高いポジションにおり、また、この3ヶ月間、私自身も一度も年齢を聞かれたことがない。
 
「日本のスポーツ界」が国際スポーツ世界で力を発揮するための国をあげた支援を強く求めたい
と猪谷さんが言及していることに非常に共感する。世界のスポーツ界がヨーロッパ主導である以上、Administration level でヨーロッパのスポーツ界で活躍する日本人が増えない限り、日本の発言力は弱まり、不利な状況になっていくだろうとは容易に想像できる。
 
本書を読み終え、自身も海外で活躍できる人材に少しでもなれるよう大学院の学びを通じて日々精進していきたいと改めて思う。