そもそも、「テレビ放映権料」がIOC収入の50%近くを支える巨大五輪の根幹となり、テレビ局が「IOCのお得意様」になったのは、1984年ロサンゼルス五輪の組織委員長であるピーター・ユべロス氏の五輪改革の成果である。結果、過去赤字続きで各都市から不人気であった「オリンピック」は、ロサンゼルス五輪で黒字化へと導かれる形となった。それ以降、テレビ局の意向は、競技方法を変える程、優先順位が高いものとなった。
しかし、近年、IOCのテレビ局に対する優先順位が変わってきているのではないかと思わされる事項が、講義を通し私なりに検証した結果、3点あるように思う。
まず、1点目は、今年の2月IOC理事会で決定された「レスリングの除外候補」問題。「レスリング」は、米国の人気スポーツである。そして、米国向け放映権を持つNBCは、14年ソチ冬季から20年夏季大会まで43億8000万ドルで契約している上、国際的普及、チケット売上、テレビの視聴率の観点から26競技から最下位になる事はとても考えにくい。IOCが五輪全体の選手数を減らすため、国際レスリング連盟に競技種目統一の対策を求め、その対応が鈍かったのは分かるが、テレビ局の意向を考えれば、「除外候補」という屈辱的な烙印を押すことは少なからずできないはすである。これに対して、もちろん、米国オリンピック委員会は、全力で「レスリング」のオリンピック種目復帰にサポートすることを約束している。
そして、2点目は、上記にも記載しているが、IOCがロンドン五輪時に、「インターネット本格中継」を容認すると同時に、動画サイト「Youtube」向けにオリンピック映像を無料提供した点である。もちろん、多額の放映権を払っているNBCは猛反発したが、これには、近年、IOCが最も力を入れている「若者のスポーツへの取込み」という課題を優先させた事に他ならないと考えている。理由として、「Youtube」は基本的に、10代、20代といった若者世代に最も使用されているNew Mediaであるからだ。
3点目は、2018年韓国・平昌、2020年日本・東京というアジア連続開催になるかもしれないという点が意外に問題視されない点である。当然のように、多額の放映権を払っている米国NBCは「リアルタイム」放送の為、時差があるアジアの連続開催は避けたいところである。しかし、私がローザンヌに来てこの4ヶ月、様々なオリンピック関係者と「2020年の招致動向」について話を重ねている限り、1度も東京のデメリットとしてこの問題を指摘された事がない。
以上の3点から、あくまでも主観的な見解になるが、IOCの優先順位はテレビ主体のビジネスモデルからNew Media主体のビジネスモデルに変わろうとしているのではないかと講義を通して感じた。是非、次回の2020年以降のIOCとテレビ局との契約内容に注目したいと思う。
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