日本のゴールデンウィークにあたる時期に、「猪瀬知事失言問題」が世界中のメディアで大きく取り上げられた。こちらスイス、ローザンヌでも当然話題にあがった。
事の発端は(日本でも十分に取り上げられているので詳細は割愛させて頂く)、猪瀬知事がニューヨーク訪問中、ニューヨークタイムズのインタビュー中に競合都市を批判する発言をした事からだ。IOC(国際オリンピック委員会)は、立候補都市の招致活動関係者が競合都市を批判するような言動を(オリンピック憲章:五輪招致都市活動規則14条)にて固く禁じている。
それに対して、ローザンヌのスポーツ関係者からは、「東京はBig Chanceだったが、これで分からなくなった。」「欧州の文化、オリンピズムの観点から、自分の事はどれだけアピールをしても構わないが、他者を批判する事は一番良くないことだ」「何が一番よくなかったかというと、宗教という非常に慎重にならなければいけない話題について言及したことだ」以上の厳しい言葉を頂いた。特に宗教の言及については、日本人の感覚からは想像を超える程海外ではタブーな話題とされている。私も同様で、クラスメイトが25カ国から集結しており、様々な宗教が存在する中、宗教の話題には極力ふれないようにしている。
さて、「今後の招致活動の動向」を読み解く上で、重要なのは何が一番のポイントであるかという事を理解する必要がある。ここでの一番のポイントは、「なぜIOCが今回の騒動について処分なしの判断をしたのか?」という点だ。この背景を読めるかどうかで今後の招致活動の仕方は大きく変わってくるのではないかと個人的には感じている。
2013年9月7日(土)ブエノスアイレスで、最終的に総数約100票のIOC委員による投票で2020年五輪開催地は決定される。そうした中、IOC委員に大きく影響を与えるのがIOC事務局側なのである。7月のIOC評価委員会(IOC事務局側)のレポートも最終的には彼らが作るので「彼らの意図」があるレポートにできあがるし、そもそもIOC委員は立候補都市を訪問する事を禁じられている。つまり、彼らは自分達の目で状況を把握することはできないし、結局は、2次情報という形でIOC事務局側から情報を得るのが自然な方法となってしまうのである。
では、仮に、今回の一件について、IOC事務局側が「東京に何かしらの処分を課した」のであれば、当然、東京には大きな減点となり勝負が決まったところではあった。つまり、何が言いたいかというと、五輪初開催というメッセージが好きなIOC事務局側的には、勝負を決めようと思えば決める事ができたはずである。どういう思惑が裏で働いたかは分からないが、東京にとっては騒動が形に残らない点では、「最悪の事態」だけは避けられたとというところだ。
では、今後、「五輪招致活動」をどのように進めていくべきなのか?改めてしっかりした行動方針を打ち出す必要があるのではないかと思う。主観的な話になるが、私個人としては以下の3点が重要になってくると考える。
まず、1点目は、「イスラム諸国への謝罪」を世界のメディアが集まる場できちんと行う事である。当然ながら、今回の騒動でIOC委員に対しての「マイナスイメージ」は拭えない。しかし、この騒動が仮に8月に起きてしまったのであれば、もう取り返しがつかない事態になっていたが、幸い、招致都市決定までまだ4ヶ月ある。ましてや、5月の「スポーツアコード」、7月の開催地プレゼンテーションとIOC委員と本格的に接する機会はまさしくこれからで、これからの4ヶ月が「招致活動の佳境」を迎えるのである。この7月までに流れが決まるといっても過言ではないと考える。これからこの事態を真摯に受け止め、しっかりした対応をすることが「今後の東京」の印象を作っていくのではないかと考える。
そして、2点目は、1点目に伴い、「東京招致PR戦略の方向転換」である。今回の騒動を受けて、元々予定していたプレゼンテーションだけを行うのは不十分だと思う。何もなかったかのようにするのではなく、少なからず今回の騒動を受け、「どのように東京は変わったのか」をPRする必要があると思う。起こった事は仕方がないことだが、それに対して「どういう対応を東京はしていくのか」という動向を見ていきたいとローザンヌのスポーツ関係者も動向を注目をしている。
最後に、3点目は、一番重要になってくる正確な「票読み」である。今回の騒動を受け、今一度、現在の選挙勢力図を分析するべきだと思う。東京は、現段階で何票の票を確定でき、何票の票を高い確率で得る事ができるのか、今回の一件で、何票の票が無くなりそうなのか、そして、何票の票が確実に無理なのか。以上の事から、不確定な票に対してどれだけのフォローができるかで勝負の行方変わってくるのではないかと感じる。
現在、東京招致活動は、大変な時期を迎えている。しかし、「大変」とは、その漢字の通り、「大きく変わるチャンス」でもある。個人的にも、「一番ピンチな時こそ、自分の株を上げるチャンスであった」と思う事が今振り返ってみれば多々ある。「東京招致チーム」も今が力の見せどころではないか。残り4ヶ月、私も全力で応援したいと思う。
0 件のコメント:
コメントを投稿