2013年8月24日土曜日

招致レースを読み解く3つのポイント




 2020年オリンピック開催地決定まであと15日となった。この段階で勝負の行方がわからない招致合戦はなかなか珍しい。例えば、2008年北京五輪開催が決まった時は、北京の圧倒的な勝利で予想通りの結果となった。そして、2012年ロンドン五輪開催が決まった時は、パリの優勢が伝えられ、最終的にはロンドンが僅差の勝利となった。最新では、2016年リオ五輪も発表前には優勢の流れがあったと言われている。

一方で、2020年五輪招致では、どの都市が有利かという話は全く出てこないし、「3都市横一線」という表現がよく使われている。しかし、厳密に言えば、東京とマドリードが競い合い、少し後ろからイスタンブールが追っているという表現が正しいのかもしれない。ここへきてのイスタンブールの失速は否めない。その理由として、1)反政府デモ2)U-20ワールドカップの記録的な最少観客集客数3)ドーピング問題 とあらゆる問題が山積しているのは大きな失点である。

12年振りにIOC新会長が決まる9月の総会は、IOCにとって非常に重要な転換期であり、このタイミングで大きなチャレンジをしない可能性が高いと言われている。以上の理由から、「安心・安全」と「低予算」を打ち出している東京とマドリードが有利に見られていると考えられるのではないか。

では、東京とマドリードの優劣はどう見極めるべきなのか?私なりの見解を以下の3つの視点からまとめてみた。

1)IOC会長選と開催都市の関係 2)2018年YOG(ユースオリンピックゲーム)開催都市決定の背景 3)2024年五輪開催立候補都市の3つの視点から佳境を迎えた招致レースを観てみると面白いと思う。

IOC会長選と開催都市の関係

IOCは絶妙なバランスを保つ組織である。5月のスポーツアコードでも改めて感じたが、格闘技系のレスリング、室内スポーツのスカッシュ、そして、サプライズの一つでもあったチームスポーツの野球・ソフトを各3都市に合わせた形で残す事となった。極論を言えば、別に2種目を残す形でも良かったはずであるが、各国のスポーツ界からの反発を抑える為、うまくバランスを取って物事を前に進めていくあたりは、IOCが長年培った絶妙なバランス感覚なのであろう。そして、そのバランス感覚は、IOC会長選と開催都市決定にも密接に関係しているように思う。欧州開催だった初期の五輪を除いて、会長就任と開催都市は同大陸になっていないケースがほとんどなのである。例えば、アメリカ出身のブランデージIOC5代目会長就任後、初めて五輪開催が決定した都市は1960年ローマ五輪である。また、アイルランド出身のキラニンIOC6代目会長就任後、初めて五輪開催が決定した都市は1980年モスクワ五輪である。さらに、1980年サマランチ会長就任(欧州)、ソウル五輪開催決定(アジア)、2001年ロゲ会長就任(欧州)、北京五輪開催決定(アジア)。以上の観点からみれば、次期IOC会長はトーマスバッハ氏が優勢な中、東京五輪開催(アジア)が有利に動くかもしれない。

2018年ブエノス・アイレス開催決定(YOG)

2018年ユースオリンピックゲーム開催地にブエノス・アイレスが選ばれた事は驚くべき結果だと言われている。事前の予想では、コロンビアのメデジン、犯罪率が高く非常に危険な都市だったが、1980年以降スポーツと文化の都市としての改善努力をし、コロンビアとしても一押しのストーリー性あるメデジンが勝つだろうと大方の予想だった。しかし、結果、ブエノス・アイレスの逆転勝利。その裏の糸を引いていたのが、クウェート王族のアハマドIOC委員だと言われている。彼のビジネスパートナーである、スペインオリンピック委員会の会長アレハンドロ・ブランコ氏がブエノス・アイレスで働く事に興味を持ちアハマド氏にお願いしたと噂されている。そして、ここで取引されたブエノス・アイレス票は、次に、マドリードに流れるとの噂も聞く。ここが一番東京にとって脅威な点である。

2024年五輪開催地は?

2020年の五輪開催都市決定によって、2024年の五輪開催都市氏もおのずと絞られてくる。よく言われているのが、2024年のパリ五輪開催説が噂されているが、2024年のパリ開催説は本当なのだろうか?現在、2024年に立候補を検討している都市(国)は、放映権問題が片付いたアメリカ、スポーツ界に影響力のあるロシアも参戦、中東カタール、新IOC会長候補バッハ氏のベルリン、南アフリカやアジアの新興国と激戦が予想される。2020年がマドリードになれば、2024年は欧州の可能性はほとんどなく、2020年東京になれば、2024年は欧州の可能性が高いと言われるだけあり、2024年立候補都市も水面下で2020年招致活動に影響を与えているに違いない。

以上の観点も大事だが、最後は、ロビー活動での票固めの結果となるだろう。恐らく、1回目の投票で過半数の票を獲得する都市はないと思うが、勝負は、上位2都市の2回目の決選投票でいかにイスタンブールの票を東京に入れてもらえるようにするか、ここでの交渉が最後の勝負の分かれ目となるのではないか。

 オリンピック開催地が決まるまで残り15日。そして、同時に、日本のスポーツ界が7年後の本番に向けて大きく動きだす日となって欲しい。東京にオリンピックが来るか来ないかでは、日本のスポーツ界の発展のみならず、アベノミクスの第3の矢の「成長戦略」にも大きく影響する事になるだろう。日本、東京の勝利を強く願って。ローザンヌより