2013年より、スイス(ローザンヌ)にある国際オリンピック委員会(IOC)公認のスポーツマネジメント大学院に留学!! 世界で戦える「真の国際人」になるべく日々の成長過程を綴る。
2013年4月16日火曜日
Olympic Legacy ② ~The case of London ~
前回のブログでは、「Olympic Legacy」とは何なのか?
そして、「Legacy Plan」を作る重要性について述べてきた。
今回の投稿では、2012年ロンドン五輪を「Case Study」として、ロンドン組織委員会、英国政府が取り組む具体的な「Legacy Plan」について見ていきたいと思う。
その前に、なぜ、ここまで「Legacy Plan」にこだわるのか?
理由として、明確な「Legacy Plan」を作らなければ、人の心を動かす具体的な「メッセージ」を作ることはできない。「オリンピック」というメガスポーツイベントを通して開催都市はどうしたいのか?どうなりたいのか?この点に関して、ローザンヌで、東京は「オリンピックを開催しなければいけないメッセージを明確にしないといけないのでは」と、度々、オリンピック関係者との議論で指摘されてきた。従って、もっと日本でも「Olympic Legacy」に関する議論がされるべきであるという思いがあるからだ。
発展国の都市である、ロンドンと東京は、リオジャネイロと違い共通点も目指すものも近いと言われてきた。ロンドン五輪関係者が作る「Legacy Plan」は大いに参考にするべきだと思う。
では、2012年ロンドン招致委員会・組織委員会・英国政府は「Legacy Plan」をどう考え、実行に移しているのか?
英国政府は、2008年6月に「Legacy Action Plan」を発表。実は、その前年度に、「Legacy Plan」として1度発表されていたが、より効果的、具体的な「5つのプロミス」という形で再度発表された。それほど、英国は「Legacy」に対して積極的なのである。
「5つのプロミス」は、以下の通りである。
1. 英国を、世界をリードするスポーツ大国とすること
2. ロンドン東部地域中心部を変革すること
3. 若者世代をインスパイヤーすること
4. Olympic Parkを環境に配慮した持続可能な生活を促進するものにする
5. 英国が、住みやすく、働きやすく、ビジネスもしやすい、そして、人々を歓迎する場にすること
その中でも、2012年までの「Legacy action plan」として「Sporting Legacy」の部分では具体的に落とし込まれている。
1. 2012年までに5歳から16歳の全ての英国の子供達に1週間当たり5時間、16歳から19歳までの
子供達に3時間のスポーツ時間を提供すること
2. スポーツエリートの育成。2012年大会にて、オリンピックのメダル数で4位以内に、パラリンピッ
クのメダル数で2位以内に入る
3. 2012年までにイングランドの少なくとも200万人がスポーツに活動的になるように支援する
そして、2012年1月には、今後の2012年ロンドン五輪後の最優先レガシープランとして、「ユース・スポーツ戦略」が発表された。これは、今後5年間に宝くじと国家予算から捻出した計10億ポンド(約1500億=2013年4月現在の為替レートから)の投資を行い、若者のスポーツ離れを阻止しようという試みである。
それと同時に、2016年リオジャネイロ五輪までに若手スポーツ選手をエリート教育すること、学校教育に「スポーツゲームプログラム」を導入し「学校スポーツ」を盛り上げることも挙げている。
また、2019年までに20の国際的なスポーツイベントを誘致する為に、積極的に招致活動を行っていこうというプランもある。
一方で、ハード面に関して、ロンドン東部ストラトフォード地区という貧困地区を再開発し、大会で使用されてきた「Olympic Park」はクイーンエリザベス公園となり、都市公園に生まれ変わることを目指している。ロンドン東部地区は、長い間工業地帯として使用されてきた為、有害化学物質による土地汚染に見舞われ再開発を避けられてきた地区であり、その為、西部と東部では貧困の差が大きくなったと言われている。
2012年ロンドン招致委員会は、「Legacy Plan」を特に「若者世代のスポーツへの取り込み」にフォーカスを 当てたことがIOC(国際オリンピック委員会)の思惑と一致し、招致も少なからず有利に進められたのも事実である。
「オリンピック」を東京に持ってきたいのであれば、IOCが現在考えている事、そして、将来的に何を優先していくかという考えを汲み取り「Legacy Plan」を作っていかなくてはいけない。たかが、「Olympic Legacy」と思われるかもしれないが、少なからず「招致成功」に影響を与える要因である事は間違いない。
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