2013年3月9日土曜日

猪谷さんの「IOC~オリンピックを動かす巨大組織」について

IOC名誉委員、猪谷さんの新刊「IOC~オリンピックを動かす巨大組織」を読ませて頂いた。
どうしても読んでみたかった新刊で、日本から発売と同時に急いで取り寄せた。

猪谷さんの存在は、恥ずかしながら、昨年、大学院に合格してから、
日本オリンピック委員会でお世話になるまで知らなかった。

現在、IOC名誉委員でもある猪谷さんは、1956年コルチナ・ダンペッツオ五輪で回転2位になり、日本人として初の冬季五輪メダリストとなったオリンピアンでもある。1982年、IOC委員に選ばれてからは、理事に2度選出、2005年には副会長も歴任されておられる。IOCに精通されており、もちろん、今回の2020年東京五輪招致にも深く携われておられるお方である。
 実は、猪谷さんとは一度、恩師である大先輩の計らいもあり、昨年の猪谷さん主催:ゴルフコンペでお会いさせて頂いたことがある。その時に抱いた印象は、「非常に気さくな方」、そして、とにかく「参加者の方への配慮」が凄かった事。100人以上の参加者がいる中、コンペの賞品を走り回って配られていたのが今でも大変印象に残っている。
 
余談ではあるが、私自身もゴルフコンペに参加させて頂き、まったくの偶然に81位という「猪谷さんの会長賞」(猪谷さん自身が81歳であることから)を本人から直接手渡しで頂いた事があり、少なからずご縁を感じた記憶がある。
 
さて、本題の内容であるが、今、まさしく講義を通して勉強している部分と本の内容がリンクしており非常に勉強になった。間違いなく今後の私のバイブルになると思う。
少しでも「オリンピック」に興味がある方は、是非、一度読んでみて欲しい。
 
その中で、特に印象に残った内容、そして、自分自身がローザンヌに住んでみて感じる事をリンクさせながら簡単に振り返っていきたい。
 
IOC委員になったのだから『オリンピック憲章』に精通しなさい
私自身も、最初の1ヶ月の講義は、「オリンピック憲章」について取り上げられることが多かった。
それを通して、女性差別問題、環境問題、ガバナンス、ドーピング、オリンピックレガシー、選手のセカンドキャリアについてIOCがどう向き合っているのか、将来的にどのような方向性を歩もうとしているのか、議論は白熱した。IOC及びIFsのMission, Vison and Objectiveについて何度も確認した。それについても、「オリンピック憲章」に各組織はどうあるべきかが記載されている。
 
夏と冬のオリンピックのアンバランスさ
夏のオリンピックが25中核競技を中心に実施している中、冬のオリンピックは7競技に留まっている。従って、当然、大会規模、そして、動くお金も夏と冬では大きな違いがある。私自身も、講義で冬のオリンピックケースを聞くことはあまりなく、夏のオリンピックが中心となっている。そうした観点から、猪谷さんの問題危機は納得させられるのである。
 
若者層の弱体化及び、スポーツへの関心が薄れている傾向について
この話題は、本当によく講義に出てくる。携帯電話・インターネット・パソコンでのゲームの普及に伴い、若者の肥満率の増加・運動する機会の減少は間違いなく事実である。この問題をどう改善するかでIOCは対策を練った。そして、立ち上げられたのが「YOG:ユースオリンピックゲームズ」である。2010年シンガポールで初めて開催されたこの大会は、14歳~18歳を参加対象とし、ジュニア世界選手権で一定の成績を収めた選手が参加するまさにユース世代のオリンピックである。しかし、この大会はそれだけでは終わらない。IOCは、文化・教育プログラム(CEP)を大会プログラムに取り込み、参加アスリートは若い世代から「オリンピック・ムーブメント」について勉強する機会を与えられる。それと同時に、各IFsについても新しいチャレンジをする場であり、バスケットボールの3on3がYOGで正式種目として採用されている。従って、参加する側も開催する側も新しい試みの中で学んでいこうという目的が強い大会でもある。
 
日本緊急課題:ローザンヌのIOC本部・IFsに若い人材を送り込み、人材育成と情報収集を行うべき
これは非常に納得させられる。なぜならば、ローザンヌに来て、IOC及びIFsで働いている日本人職員は私が知っている限り1人しかいない。それに関して、本当に「日本スポーツ界」は遅れをとっていると思う。それは、私自身も同じである。大学院の中で、他のクラスメイトは、インドネットワーク、中国ネットワーク等々の卒業生(IOC及びIFsで働いている)が自国の後輩たちと連携をはかっている姿を見るとうらやましく思う。また、世界第3位の経済力を持っているにも関わらず、ヨーロッパでの「日本スポーツ界」のプレゼンスは低いのではないかと思う。それに関して、やはり言葉の問題は無視できない。理由として、IOC及び各IFsでは、基本的にはフランス語が使われている。もちろん、職員は英語でも話せるが、コミュ二ケーションを含め、フランス語も仕事上厳しいのではないかと思う。その他にも、よくクラスメイトに驚かれるのは、「スポーツの基本法」が2011年に成立したのは遅すぎないか?、そして、なぜ「スポーツ庁」が存在しないのか?日本ほどの経済国がなぜ??とよく聞かれる。
 
恩師の大先輩がよく言っていた言葉を思い出す。
 
スポーツ発展国か後進国の違いは、「若者、そして、女性がスポーツ界で高いポジションに得られているかどうか?」、つまり、チャンスが与えられているかどうか?だと・・・
 
少なくともローザンヌでは、多くの大学院の卒業生が各IFsで高いポジションにおり、また、この3ヶ月間、私自身も一度も年齢を聞かれたことがない。
 
「日本のスポーツ界」が国際スポーツ世界で力を発揮するための国をあげた支援を強く求めたい
と猪谷さんが言及していることに非常に共感する。世界のスポーツ界がヨーロッパ主導である以上、Administration level でヨーロッパのスポーツ界で活躍する日本人が増えない限り、日本の発言力は弱まり、不利な状況になっていくだろうとは容易に想像できる。
 
本書を読み終え、自身も海外で活躍できる人材に少しでもなれるよう大学院の学びを通じて日々精進していきたいと改めて思う。